異文化経営学会発表 – オンラインインターン型研修プログラムの人材育成成果と課題について

この文章は、2020年12月に、異文化経営学会で発表した内容を文章にまとめたものです。
2020年末の我々のオンラインインターンシップの状況と、その後の展望を発表しています。
30分の動画と文章、内容はほぼ同じですので、お好みの方を視聴していただけたらと思います。

スパイスアップグループ紹介

我々、スパイスアップグループは、「異文化で活躍できる人材を育成する会社」です。
世界8カ国に拠点を持ち、それぞれの国に現地に駐在するスタッフがおり、海外での研修プログラムを企業向け、学生向けに行っています。

学生向けのプログラムは、20大学、1専門学校、1高校のオフィシャルプログラムとして運営した実績があります。

(2018年の発表から実質1年で6校増えました)

参加人数も、累計で1060人。2019年単年で301人になっています。

カンボジアで異文化ビジネス体験

学生向けの一番参加者が多いプログラムが、サムライカレープロジェクトです。
異文化で活躍できる人材を育てるために、カンボジアでカレー屋の経営を体験する研修プログラムです。
毎年150人以上の学生がカンボジアの首都・プノンペンに来て、カンボジア人相手の商売を体験します。

カレー屋を経営するわけですが、カンボジア人の多くはカレーが嫌いなので、カレー以外の、彼らが好む商品を見つけることかプログラムはスタートします。

そして、試食会を行ったり、カンボジア人学生をバイトとして雇ったりして、実際にイオンモールやお祭りやサッカースタジアムや市場で販売を行うのです。

カンボジアという異文化の中で、異文化のお客さんに、異文化のカンボジア人スタッフと共にモノを作り、販売するなかで、異文化ビジネスを体験することができるのです。

その結果、プログラム修了後のアンケートで95%の学生が「海外で働きたい」と答えました。

一般の学生36%と比べ非常に多くなっています。
これは、実際にビジネスを体験し「自分でもできる」と確信できるからです。

なお、92%の学生が就活でこのエピソードを使い、全学生が友達にも勧めたいと言ってくれる、非常に満足度の高いプログラムになっています。

この様に、世界で活躍できる人材を育てるとともに、学生にビジネスの楽しさを教えるプログラムを提供しています。

2020年、コロナ禍の現状

しかし、新型コロナの影響で2020年3月から海外渡航ができなくなりました。

その後の我が社の状況をこの5分の動画(テレビ番組)でご説明します。
(とばしてもらっても構いません)

我々が取った行動は、オンラインでもグローバルビジネスが体験できるプログラムを新規で作る事でした。

私は2006年に、日産自動車でグローバル物流管理システムを作る仕事をしていました。

オフィスは、厚木の山奥だったのですが、オンライン(当時はISDNを2回線繋いだテレビ電話)会議を1日8時間くらいやってました。(朝はメキシコ、昼は中国とタイ、夕方はスペインとフランス、夜はアメリカと時差があるからずーっと仕事ができる!)

また、現在も世界8カ国に拠点があるため、常に海外との業務なので社内業務の9割以上がオンライン。
世界中のスタッフをオンラインでマネジメントしているのです。


この経験を活かして作ったのが、グローバルマーケティングオンラインです。

このプログラムは、参加者の学生にマンガアプリのマーケティングをしてもらうものです。
我が社が運営するスマホアプリ、Manga VAMOSのアクセス数をアップすることがミッションとして課せられます。

ただし、このアプリ、掲載されている漫画は全てスペイン語です。

それどころか、メニューなども全てスペイン語です。
ほとんどの日本人はもちろん、アメリカ人や中国人も読めない。
スペイン語圏の人たち専用のアプリなのです。

当然、学生の反応はこうなります。

2020年12月現在、すでに30人以上の学生が参加してますが、スペイン語を話せる学生はほぼいません。
そんなことできるわけねえ!ってみんな思うんですが、やってみたら、できちゃうんです。
なぜできるのか?このあと解説します。

スペイン語できない学生が、メキシコ人とビジネスする方法

このプログラムで学べるのは、この3つです。

1.外国人とのビジネス
2.チームビルディング
3.実戦マーケティング

まず、1.外国人とのビジネス。
スペイン語を公用語をする国は21カ国もあります。
このうちどこをターゲットにすべきか決めるため、いろんな国の人にヒアリングを行います。

その際に、語学学習アプリを使用します。


ランゲージエクスチェンジといって、語学学習者が互いに教え合うサイトです。
これに、「スペイン語を学びたい。日本語が話せます」と登録すると、「日本語を学びたい・日本に興味がある」スペイン語圏の人たちが話しかけてくれるわけです。

しかし、話しかけてくれる言語はスペイン語です。さあどうするか?
非常に単純で、翻訳アプリを使います。

このサイトは、チャットでのやりとりが基本ですので、送られてきたスペイン語の文章をDeepL翻訳に入れれば理解できる日本語になります。
そして、返信も日本語をDeepL翻訳に入れればスペイン語になります。これで、会話ができちゃうんです。

もちろん完璧な翻訳にはなりませんが、向こうは語学学習中なので、文法の間違いなどには寛容で、頑張って理解してくれます。
そして、学生はこれで会話が成り立つことで「外国人とコミュニケーションとるって、意外と簡単なんだ」ということを体感し、自信をつけます。

そして、プロフィールに「私は漫画が好きで、漫画について質問をしたい」とスペイン語で書いておくと、ものすごい量のメッセージが向こうからやってきます。
外国に、漫画好き、思った以上にたくさんいるのです。

そして、現地の漫画好きからしてみると、日本人の漫画好きはレアキャラ。
聞きたいこともたくさんあるし、いろんな人を紹介してくれたりもするのです。

こうやって、現地の漫画家や漫画Youtuber、漫画サークルなどを紹介してもらえます。ここを起点にプロモーションをおこなうわけです。

たとえば、あるチームは、メキシコ人の漫画Youtuberと交渉して動画の中にManga VAMOSのプロモーションを入れてもらいました。

あるチームは、ペルー人向け漫画コンテストを開催して、1週間で8作品を投稿してもらいました。

こうやって、交流アプリで仲間を見つけ、翻訳アプリで交渉し、SNSを使ってプロモーションするという、2020年代のマーケティングを体感してもらうわけです。

ちなみに、英語が得意な人は英語で交渉をしてもらいます。
また、弊社スタッフにスペイン語ネイティブの者がおり、ネイティブチェックが必要な場合やトラブルが起こった場合は、彼が手助けします。

このプログラムは、学生4-6人1チームで行います。
オンラインでやる弱点は、チーム内の連携がとりにくいこと。
そこで我々は、2つの方法で、チームビルディングを行います。

ひとつ目が、診断テスト。
ストレングスファインダーなどの診断テストを行い、学生一人一人に、向いている仕事を伝えます。
リーダーシップがあるからプロジェクトマネージャとか、独創性があるから広告作成者とか、正確性があるから予算管理者とか。

そして、その内容を踏まえて、自分でチーム内での役割を決め、立候補してもらいます。
これによって、ある程度の自信を持って、自責で、役割を担ってもらいます。

ふたつ目が、プロジェクトマネジメントの講義。
to doリストを作り、期限、責任者を決め、進捗を管理する。プロジェクトマネジメントの方法を講義し、これを行わせます。
この2つで、脱落者を出すことなく、チームで目標達成まで活動してもらうことができます。

また、アクセス数アップのもう一つの方法として、広告の打ち方を指導します。
ヒアリングから、ターゲットとなる国の若者が使っている媒体を調べ、そこに広告を打ちます。

広告を打つ際も、ABテストの使い方を教え、それを学生が実行します。
お客さんが求めているモノを知る。お客さんが求めているモノをお客さんに提供する。
自分がいいと思う広告ではなく、お客さんがクリックしたがる広告を打つ。
という、ビジネスの基本を学んでもらうのです。

ちなみに、この広告費は、全て我々が負担します。

参加者の声

この様なプログラムを行った結果、参加者は、
「日本文化に誇りを持てた」「外国人とビジネスができたという自信がついた」
という感想を話してくれました。

プログラム修了後のアンケート調査の結果からも、外国人とのビジネス、マーケティングの実践学習については、かなり高い実績が出ています。

ただ、プロジェクトマネジメントに関しては、完璧とは言いがたい結果ですので、これから改善する必要があります。

オンラインでここまでできるという実感ができたというのが現在の状態ですが、まだ精度を上げる必要があるので、特にオンラインでも学生が喜んで参加する仕組みを現在も作り続けています。

2021年には、これだけでなく、カンボジアのカレー屋と同様の体験を、岡山県瀬戸内市の外国人160人が学ぶ専門学校のお祭りで体験する、サムライカレー@瀬戸内。

大学の学園祭を、仮想会社を作り資金調達をするところから、マーケティング、販売を行い、株主総会を開き、配当を配るところまで、1年間かけて行う、長期プログラムもラウンチを予定しています。

上記2プログラムは、とある大学と共同で現在開発中です。

この様な取り組みは、マスコミでも注目を浴びつつあり、テレビやラジオ、雑誌の取材が来始めています。

コロナ禍でも、オンラインで、

これを、我が社は推進していきます。

発表は以上です

本プログラムに関するご質問、お問い合わせなどはこちらからお願いします。

関連記事

これらのプログラムについて、よりくわしく知りたい方は、こちらをご覧ください。

2018年11月 異文化経営学会カンボジアインターンについての発表はこちらです