オンライン授業から脱落しつつある大学生

2020年10月、多くの大学で、条件付きで、一部の授業が教室で行われることが許可されました。

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今まで当然すぎて誰も疑問を持たなかった「教室で授業をする」が、特別な事になったという事実が、2020年で世界が変わったことを象徴しています。

大学生は、教室で授業を受けたいのか?

私は、なんやかやで年間30くらいの大学で講師をしているのですが、そのうちの2つの大学で「教室で授業をする」ことができました。
授業はオンライン配信もされているので、オンラインでもオフラインでも受けられます。どちらの方が参加者が多かったと思いますか?

答えは、オンライン、圧勝!

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例えば、ある授業は、教室 5人 : オンライン 65人くらいでした。
ちなみに、オンラインにした理由を別途学生に聞いてみると「行くのが面倒だから」「コロナ感染のリスクがあるから」。

少なくとも、授業の出席状況をみると、大学はオンラインでいいんじゃね?という話になります。


大学生は悩んでて、倒れている

しかし、大学生一人一人に話をしてみると、そんなに単純ではありません。
多くの大学生は、悩んでいて、人によっては倒れています。

この授業も、去年は教室に150人くらい来ていたのですが、今回は教室5人+オンライン65人と、1年前の同じ授業に比べて半分以下の参加者になっています。
授業の登録者数が同じであれば、半分以上が脱落しているということになりますね。

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「オンラインは、現実よりも優先順位が低い」問題です


オンラインは、現実よりも優先順位が低い

皆さんも、オンラインのイベントとか、ついうっかり欠席しちゃったりしませんか?オンラインのプレゼン、つい準備がおざなりになったりしませんか?

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準備して、行き方調べて、スケジュールして、当日着替えて、電車に乗って、参加するイベントと比べて、クリック一発で参加できるイベントは、楽であるが故に、緊張感がなくなります。
めっちゃサボりやすいんです。

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大学の授業も同様であり、特に成績下位大学では脱落者が多くでます。
誰にも強制されずに家で勉強ができるような学生は、成績上位大学行っているわけで、下位大学生は、自分を律することが苦手です。

従って、「登校する」という強制力がない世界では、どうしても、授業ではなくヒカキンの動画やNintendo Switchに流れてしまうのです。

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近い将来、大学の登校が許可されても、オンラインでの授業が完全になくなることはないでしょう。
従って、最初は登校→めんどくさくなって、オンライン授業→さらにどうでもよくなって家でゲーム という楽な方に流れる道筋はなくなりません。

こうして、今後も前期後期合計30回の授業を途中で脱落する人は増えていく可能性が高いのです。

その脱落率は下位大学の方が高くなり、2022年あたりのFラン大学では、看過できないレベルになると、肌感覚で感じています。
これは、社会問題になる気がします。


オンラインは、友達ができない

そして、上位大学学生も下位大学学生も同様に感じている不満があります。「オンラインは友達ができないから、寂しい」ということです。

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授業で知識を伝えるということであれば、オンラインだろうがオフラインだろうが、大差はありません。
実際、とある大学での学生へのアンケート結果でも、オンライン授業のクオリティが不満という学生は25%程度でした。
これに対し、コミュニティに関する不満は75%。ここが最大のネックです。

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必要な事をコンパクトにまとめ、効率よく伝えるのに、オンラインは最適です。
仕事は、オンラインでやった方が、明らかに生産性が高いです。
しかし、大学生が大学に求めているのはそれだけではありません。

いろんな地方から集まってきた学生としょうもないことをだべったり、世の中にはいろんな人がいることを交流の中から学んだり、恋愛を含む交友関係を作ったり、サークルや研究室という居場所を作ったり、そんなことを学生は求めています。

施設が使えない、人が集まらない、無駄なコミュニケーションをとる機会のない大学は、このコミュニティを作るという機能がごっそり消えてしまっているのです。

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であるがゆえに、期待していたキャンパスライフが送れず、交友関係を作れず、居場所を作れなかった学生は、病み始めています。

世の中には、人と会うことで元気になる人と、人と会うことで疲労する人がいるのですが、前者のタイプにとって、コロナ禍の大学は非常に価値が低いのです。


大学生活をあきらめてしまわぬように

私は、20年前、大学で、授業よりもコミュニティの中で多くを学んだ経験があるので、このコロナ禍での大学生活は非常に辛いだろうなと思います。
その中で、少しでも有効な時間し、脱落者を減らすためにやるべきことを考えてみました。

一つは、1年生の早い時期に、できたらオフラインで、学生を少人数のグループに分けて、短期集中型の課題達成型のプログラムを実行することです。

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例えば、我々が、瀬戸内でやるプログラムのように「1週間で、外国人留学生と一緒に祭りを運営する」といった、共通の目標を設定し、グループでそれを達成する機会を提供するのです。

隔離された場所で、特定の人と一緒に生活する事で、感染のリスクを減らしながら、オンラインではできない「無駄な交流」を行います。
この時、同じチームになったメンバーとは仲良くなり、オンラインで交流を続ける事ができるでしょう。

また、同じ課題に向かって頑張ったという共有体験があるため、別チームのメンバーとも話をするきっかけができ、それを元に交流をすることができます。

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こうやってできた友達と繋がることで、オンラインになってからの困りごとを助け合ったり、オンラインで無駄な交流を続けたりします。
この学生同士の小さなコミュニティは、大学から脱落する人を救ってくれるはずです。

これがベストな方法かはわかりませんが、海外のオフラインプログラムも、オンラインインターンシップで培った実績をフル投入して、短期間での学生のコミュニティ作りに挑戦します。

コロナ禍の学生生活は大学も学生も、もちろん我々の様な教育に関わる業者も初めての経験で、手探り状態です。
最初からベストを見つけることはできませんが、まずはやってみて、効果をみることが大切なのです。

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